クロアチア代表のシステムは4−2−3−1またはインテルで活躍するブロゾビッチを1ボランチに置く4−3−3を基本フォーメーションとしています。
特長としては中盤にサッカーIQの高い欧州トップクラスの選手が多く揃っている点で、魅力的なサッカーを展開します。
現在の代表チームは2018ロシアW杯で準優勝した際に中心メンバーとして活躍したイヴァン・ラキティッチやマリオ・マンジュキッチは代表を退きましたが、35歳のベテランキャプテンのルカ・モドリッチを中心としたチームは健在で中盤にはマテオ・コバチッチ、マルセロ・ブロゾビッチなどビッグクラブで活躍する選手やマリオ・パシャリッチやニコラ・ブラシッチなど今後代表チームの中心となれるポテンシャルを持った楽しみな中盤選手が揃っています。
目次
クロアチア代表のチーム紹介
現在の代表監督は旧ユーゴスラビア(現ボスニア・ヘルツェゴビナ)出身のズラトコ・ダリッチです。母国のクラブでプレーし、現役引退後の2004年から監督としてのキャリアをスタートしました。
クロアチアやサウジアラビア、アラブ首長国連邦のクラブを率いた後に、当時ロシアW杯欧州予選敗退の危機にあった2017年にクロアチア代表監督に就任しました。(予選最終戦のウクライナ戦に勝ち、プレーオフのギリシャ戦にも勝利が必要で1敗も許されない状況での就任となりました)
監督就任後、短い期間で代表チームを立て直しプレーオフを制してW杯本大会出場を獲得。初のビッグトーナメントとなったロシアW杯で準優勝し評価を一気に高めた監督です。
W杯で評価を上げたダリッチ監督ですが、W杯後に初開催となったUEFAネーションズリーグ2018−2019ではグループ最下位、現在開催中のUEFAネーションズリーグ2020−2021でもグループ3位という結果に終わり決勝トーナメント進出を逃しています。
直近の大会では結果を残せていませんが、ベテラン選手の引退などもあったので現在はEURO本大会に向けチームを再構築している途中ではないでしょうか。
クロアチア再生の立役者のダリッチ監督の戦術がしっかりとチームの結果に結びつけば、今大会も期待できるのではないでしょうか。
クロアチア代表のEURO2020予選戦績
EURO予選では強豪国のウェールズ、スロバキア、ハンガリーが同居するグループEを5勝2分1敗の成績で1位通過しました。
予選ではディナモ・ザグレブに所属するブルーノ・ペトコビッチが最多の4得点、ACミラン所属のアンテ・レビッチが最多の3アシストの活躍を見せるなどフォーワード陣が結果を残し、監督の期待に応えました。
今回はそんなクロアチア代表のEURO本大会に向けた「予想される代表メンバー」「チームの戦術」「注目選手」などを徹底解剖し、皆さんにご紹介したいと思います。
同国は90年台初頭に旧ユーゴスラビアから独立し、クロアチア代表として新たなスタートを切りました。独立後初のビッグトーナメントへの参加となった EURO1996イングランド大会で8強入りを果たし、2年後の1998フランスW杯では初出場ながら3位の好成績を残しました。
独立後に短い期間で結果を残していることから、いかに旧ユーゴスラビアに能力の高いサッカー選手が沢山揃っていたかが分かりますね。
その後は主力の高齢化などによって停滞した時期が続きましたが、モドリッチやラキティッチなど次世代の若手が台頭し、3位となったフランスW杯からちょうど20年後の2018年ロシアW杯で過去最高成績となる準優勝を果たしました。
ロシアW杯準優勝の成績によって、彼らがこれまで比較されてきた「ヴァトレニ」(炎を意味するクロアチア代表の愛称で、主に1998フランスW杯3位の成績を残したチームを指している)を上回るチームとなりました。
W杯の前回大会ファイナリストとして挑むクロアチア代表が新型コロナウイルスの影響により1年延期された今年のEURO本大会でどのような戦いを見せてくれるのか注目されます。
【クロアチア代表のEURO予選結果】
HOME | 結果 | AWAY | |
第1節 | クロアチア | 2-1 | アゼルバイジャン |
第2節 | ハンガリー | 2-1 | クロアチア |
第3節 | クロアチア | 2-1 | ウェールズ |
第4節 | スロバキア | 0-4 | クロアチア |
第5節 | アゼルバイジャン | 1-1 | クロアチア |
第6節 | クロアチア | 3-0 | ハンガリー |
第7節 | ウェールズ | 1-1 | クロアチア |
第8節 | クロアチア | 3-0 | スロバキア |
順位 | チーム | 試合 | 勝 | 分 | 負 | 得 | 失 | 差 | 点 |
1 | クロアチア | 8 | 5 | 2 | 1 | 17 | 7 | 10 | 17 |
2 | ウェールズ | 8 | 4 | 2 | 2 | 10 | 6 | 4 | 14 |
3 | スロバキア | 8 | 4 | 1 | 3 | 13 | 11 | 2 | 13 |
4 | ハンガリー | 8 | 4 | 0 | 4 | 8 | 11 | -3 | 12 |
5 | アゼルバイジャン | 8 | 0 | 1 | 7 | 5 | 18 | -13 | 1 |
クロアチア代表の基本フォーメーション
GK | ドミニク・リバコビッチ | ディナモ・ザグレブ |
ロブレ・カリニッチ | ハイドゥク・スプリト | |
イヴォ・グルビッチ | アトレティコ・マドリード | |
シモン・スルガ | ルートン | |
DF | ドマゴイ・ヴィダ | ベシクタシュ |
デヤン・ロブレン | ゼニト・サンクトぺテルブルク | |
ティン・イェドバイ | アウクスブルク | |
ボルナ・バリシッチ | レンジャーズ | |
マテイ・ミトロビッチ | クラブ・ブルージュ | |
ドゥイエ・チャレタ・ツァル | マルセイユ | |
ダリオ・メルニャク | リゼスポル | |
ミレ・シュコリッチ | オシエク | |
カルロ・バルトレツ | コペンハーゲン | |
シメ・ヴルサリコ | アトレティコ・マドリード | |
MF | ルカ・モドリッチ | レアルマドリード |
マテオ・コバチッチ | チェルシー | |
ミラン・バデリ | ジェノア | |
マルセロ・ブソロビッチ | インテル | |
マリオ・パシャリッチ | アタランタ | |
ニコラ・ブラシッチ | CSKAモスクワ | |
FW | イバン・ペリシッチ | インテル |
アンテ・レビッチ | ミラン | |
ブルーノ・ペトコビッチ | ディナモ・ザグレブ | |
ヨシプ・ブレカロ | ボルフスブルク | |
ミスラフ・オルシッチ | ディナモ・ザグレブ | |
アンテ・ブディミル | オサスナ | |
アンドレイ・クラマリッチ | ホッフエンハイム |
クロアチア代表の戦術・特徴
2018W杯で準優勝となり主要大会において過去最高成績を残したクロアチア代表。今年6月に開催予定のEUROでは過去最高成績のベスト8以上の成績を国民は期待しているはずです。W杯以降、メンバーの入れ替えを行った新星クロアチア代表のチームの特長と戦術を3つのポイントから深堀りしていきましょう。
統率された堅い守備ライン
クロアチア代表の特徴の一つがまとまりのある堅守にあります。他国の強豪に比べ爆発的なスピードを持つサイドバックは不在ですが、ロブレンを中心とした守備陣は相手チームが主導権を握る中でもしっかりした守備から失点を避け選手同士にまとまりがあります。
複数存在するフィールドの監督
クロアチア代表の最大の特徴はタレントが豊富に揃う強固な中盤にあります。中盤選手が長短のパスを使い分けながら前線へボールを繋いでいきます。ボールコントロールの技術に長けた選手が多く、パス、ドリブル、シュートはどれも高水準で穴が見当たりません。また攻守にハードワークを厭わないのも大きな武器です。
絶対的エース不在ながら違いを作れる攻撃陣
中盤からのパスにクラマリッチが色々な場所に顔を出し攻撃の起点になりウイングのレビッチやペリシッチが得点を奪うシーンも多く見られます。絶対的なストライカーは不在ながら、前線からチェイシングを怠らずチームの為に貢献できる選手が揃っています。
クロアチア代表の注目選手
長年チームを支えるベテランや今後が期待される選手など、今回のEURO2020のクロアチア代表の注目選手と特長について触れてみたいと思います。
ルカ・モドリッチ
2018年のバロンドール受賞者で現代表チームキャプテンのモドリッチはチームの象徴的存在です。少年時代はクロアチア紛争の影響で故郷を離れて難民生活を送った過去を持つモドリッチは母国のディナモ・ザグレブでトップチームデビューを果たした後にイングランドのトッテナム・ホットスパーでの活躍を経て2012年からスペインのレアル・マドリードに所属しています。
35歳となった現在でも万能の司令塔としてレアル・マドリード、クロアチア代表の10番を背負い、主力として活躍しています。
彼は攻撃面・守備面の両方で高い能力を発揮できチームの心臓として機能するプレーヤーです。守備面では172cmと小柄ながら1試合走れる運動量と献身的な守備、的確な読みで相手選手に対して激しく寄せるなど守備意識の高い選手です。
攻撃面では世界最高レベルのボールコントロールと判断力を併せ持ち、両足から長短織り交ぜた高い精度のパスを供給するなど攻撃を組み立てます。またペナルティエリア外から放つ強烈なミドルシュートも特長です。
魔法使いのように味方を操るモドリッチプレーに注目です。
デヤン・ロブレン
旧ユーゴスラビア(現ボスニア・ヘルツェゴビナ)で生まれたロブレンは、2歳の頃ユーゴスラビア紛争の影響で難民生活を余儀なくされます。ドイツのミュンヘンへ移住し7年間過ごした後にクロアチアへ移住しました。クロアチアのディナモ・ザグレブでプロキャリアをスタートさせフランス・イングランドのクラブを渡り歩き、昨年6年在籍したリバプールを離れ2020年にロシアリーグのゼニトに移籍しました。
クロアチア代表の守備の中心でもある彼の特長は188cm84kgの恵まれた体格を活かした空中戦とフィジカルコンタクトの強さです。スピードは速くはありませんが闘争心を活かした捨て身のディフェンスでチームの危機を救います。
また、ディフェンスラインからの組み立てのパスも高水準にこなし精度の高いフィードでリズムを作ることもできます。
試合によって好不調の波が激しい点が心配ですが、ロブレンは生粋のファイターとして闘志あふれるパフォーマンスで守備を支えるディフェンスリーダーです。
マテオ・コバチッチ
クロアチア人移民の両親の下、オーストリアで生まれたコバチッチはオーストリアのクラブユースを経てクロアチアのディナモ・ザグレブに移籍しました。16歳でトップチームデビューした後にセリエAの強豪インテルへステップアップをすると、その後はレアル・マドリードへ移籍し現在はプレミアリーグ強豪のチェルシーで活躍しています。
現在26歳ながら異なる国の3つのビッグクラブに所属したエリートのコバチッチは中盤であればどのポジションでもプレーが可能なユーティリティ性を持った選手です。
巧みなボール捌きや相手選手に奪われないボールキープ力に加え推進力のあるドリブルと決定的なスルーパスでゴールを演出できる能力など、全てのプレーで高いクオリティを発揮する同選手は「クロアチアの大器」と呼ばれモドリッチの跡を継ぐ選手として期待されています。
ラキティッチが代表引退した現在、早くから「天才」と呼ばれてきた彼の活躍が鍵となるはずです。
アンテ・レビッチ
母国クロアチアのRNKスプリトでプロデビューしたレビッチは活躍が認められ19歳の若さでイタリアのフィオレンティーナへ移籍しました。同時期にA代表にも選出され将来を期待される選手として2014年のワールカップにも出場を果たしました。若くしてブレイクしたレビッチですがその後はスランプに陥りいくつものクラブをレンタルで渡り歩き、2018年に移籍したブンデスリーガのフランクフルトで再ブレイクを果たした苦労人です。現在はセリエAのACミランに所属しています。
主に左ウィングでのプレーを得意としている彼の特長は粗さはややありますが馬力のあるスピードを活かしたドリブルです。185cmとサイズもあるので抜け出す際にディフェンダーに体をぶつけられても倒れない強さもあります。裏への抜け出しの上手さや味方ゴールを演出する決定的なパスを通すセンスもあります。
また、前線からタックルやプレスを仕掛けるなど守備面での貢献度もかなり高い選手です。ラフプレーが目立つシーンも少なくないので精神面が今後改善されるともっと素晴らしい選手になるはずです。
苦労を重ね、代表チームに返り咲いたレビッチのEUROでの活躍に期待したいと思います。
クロアチア代表EURO2020の見どころ
続いては今夏開催予定のEUROでのクロアチア代表の見どころや注目するべき点について考案してみました。
代表引退選手の穴を埋める存在
準優勝したロシアW杯で主力として活躍したラキティッチがすでに代表引退しており新たな布陣でEUROに挑むクロアチア代表。W杯ではモドリッチとラキティッチの中盤コンビが相手チームの脅威となっていました。モドリッチとコンビを組み中盤を形成させる選手を誰にするのかダリッチ監督の決断に注目です。
勝ち方を知り尽くしたベテラン勢
現在のクロアチア代表には各ラインにロブレン・モドリッチ・ペリシッチなどチャンピオンズリーグや前回のW杯など大舞台での試合を経験しているベテラン選手が揃っています。彼らのリーダーシップと統率力でチームに勢いを与えることができるかが見どころです。
今シーズン得点量産のストライカー
今シーズン、ドイツブンデスリーガで得点を量産している注目の選手がクラマリッチ(ホッフェンハイム)です。前線ならどのポジションでも高水準にこなせる選手なので、このまま調子の良い状態をキープできればクロアチア代表の攻撃力がさらに増すことは間違いありません。現在クラブで波に乗っている彼のEUROでの活躍に注目です。
クロアチア代表EURO2020の展望
【グループステージ】グループD:クロアチア・イングランド・スコットランド・チェコ
第1戦 6/13 クロアチアVSイングランド
グループDに入ったクロアチアの初戦はグループ内の最大のライバルである優勝候補のイングランドです。
前回の2018W杯の準決勝でも対戦したイングランド(延長の末2−1でクロアチアの勝利)との戦いは注目も高く好ゲームが予想されます。
全てのポジションにタレントを多く揃えるイングランドに対してクロアチアがどのよう戦術で試合を進めてくのか楽しみです。
フィジカルの強いイングランドのディフェンダー陣とのマッチアップは見応えがありそうです。イングランドの絶対的ストライカーのハリー・ケイン(トッテナム)は非常に得点を奪う能力が高い選手なので注意が必要です。
第2戦 6/19 クロアチアVSチェコ
2戦目は、予選を2位通過して本戦出場を決めたチェコ代表です。
絶対的なスター選手不在ながらまとまりのある組織力を活かした堅守速攻でクロアチア戦に挑んでくるでしょう。
チェコを代表する前守護神のペトル・チェフの後を任されたトマーシュ・ヴァツリーク(セビージャ)がゴールマウスを守っています。その他現在クラブで好調のフォワード、パトリック・シック(レヴァークーゼン)の得点力に注意が必要です。
第3戦 6/23 クロアチアVSスコットランド
グループリーグ最終戦の対戦国はスコットランドです。予選でプレーオフを勝ち進み1996年開催のイングランド大会以来となるEURO本大会の出場を決めました。
世代交代や育成に失敗して長らく低迷期にあったスコットランド代表ですが、現在のチームには自国の強豪クラブのセルティックやプレミアリーグに所属する選手が多く揃っています。
特に警戒するべき選手は攻撃型の左サイドバックの選手です。キーラン・ティアニー(アーセナル)とアンドリュー・ロバートソン(リバプール)は今大会屈指の攻撃型サイドバックでスピードと精度の高いクロスを供給するため注意が必要です。
グループD1位通過の場合:グループF2位チームと対戦
グループD2位通過の場合:グループE2位チームと対戦
グループDはイングランドとクロアチアがトップを争う展開が予想されます。仮に1位通過した場合は今大会の「死の組」グループFのフランス・ポルトガル・ドイツ・ハンガリーの2位通過チームとの組み合わせが決まっており優勝候補との対戦となりそうです。
チームに勢いをもたらすためには初戦のイングランド戦で最低でも引き分け以上の結果が欲しいところです。
短期決戦のEUROにおいて、ダリッチ監督がどのようなシステムとメンバーで大会を戦っていくのか非常に注目されます。
まとめ
いかがだったでしょうか?
今回は「EURO2020クロアチア代表の戦力と注目選手を解説」と題してお伝えしました。
今回ご紹介した選手以外にも陸上経験を活かした快速で相手を翻弄する若手のブレカロ(ボルフスブルク)や190cmの長身を活かして攻撃の起点となれるブディミル(オサスナ)など試合状況によって変化を与えられる選手もいます。彼らが最終メンバーに選出されるのかメンバー発表が楽しみです。
様々な苦難を乗り越え独立から今年の6/25でちょうど30年を迎えるクロアチア。人口400万人ほどの小国ながらヨーロッパの強豪国として優秀な選手を輩出しているクロアチア代表が、「EURO初制覇」という結果で国民に感動を与えられるか注目したいと思います。
エキサイティングな試合と感動を与えてくれるEURO2020で「新星ヴァトレニ」達がどのようなプレーで世界のサッカーファンを沸かせてくれるのか大会開催が待ち遠しい限りです。
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