熱狂的なリーズファンだった両親の元に生まれたジェイムズ・ミルナー。ユース時代をリーズで過ごすも財政難に陥ったことを理由にニューカッスルへ売却。苦渋の決断を迫られたミルナーは渋々承諾し、トップチームでプレーする。それからアストンヴィラ、マンチェスター・シティを経てリヴァプールへ移籍した。初めから順風満帆なサッカー人生とは言えなかったジェイムズ・ミルナーだったが、今やベテラン選手の一人としてチームを引っ張っている。そんな彼の魅力を余すことなく徹底解説。
目次
ジェイムズ・ミルナーのプロフィール
生年月日 | 1986年1月4日 |
国籍 | イングランド |
出身 | リーズ |
身長 | 175㎝ |
体重 | 70㎏ |
利き足 | 右足 |
ポジション | MF・DF |
背番号 | リヴァプール:7 イングランド代表:17 |
タイトル | <クラブ> ・マンチェスター・シティFC プレミアリーグ:(2011/12, 2013/14) FAカップ: (2010/11) フットボールリーグカップ: (2013/14) FAコミュニティ・シールド: (2012) ・リヴァプールFC UEFAチャンピオンズリーグ : (2018/19) UEFAスーパーカップ:(2019) FIFAクラブワールドカップ :(2019) プレミアリーグ : (2019/20) <個人> PFA年間最優秀若手選手賞 :(2009/10) PFA年間ベストイレブン : (2009/10) |
ジェイムズ・ミルナーの経歴
リヴァプール屈指の何でも屋ことジェイムズ・ミルナー。彼のサッカーのルーツは、彼の両親が熱中していた地元のサッカーチームにあった。そんな彼の経歴をユース時代からご紹介。
幼少期・生い立ち
ジェイムズ・ミルナーはイングランドのリーズ西部に位置するホースファースに生まれた。両親が熱烈なリーズサポーターだったため、ミルナーもその本拠地であるエランド・ロードに頻繁に通った。
彼が10歳の頃、念願のリーズ・ユナイテッドの下部組織に所属した。小学校時代のミルナーは何故かサッカー選手ではなく、クリケット選手としての才能を認められていた。さらに徒競走がとにかく得意で、短距離走や長距離走で地区記録をマークしたこともあった。
リーズ・ユナイテッド時代
下部組織で経験を積んだジェイムズ・ミルナーは、2002年11月10日に行われたウェストハム戦で16歳309日というプレミア史上2番目の若さでプレミアデビューを果たした。(最年少記録は1999年にコヴェントリーに所属していたG・マクシェフリィの16歳198日)
そのひと月後の12月26日のサンダーランドAFC戦でミルナーはゴールを決め、ウェイン・ルーニーが持っていたプレミアリーグ最年少得点記録を更新。ミルナーは当時16歳357日で、ルーニーが持っていた記録は16歳360日と3日塗り替えた。絶好調のミルナーはその2日後に行われたチェルシーFC戦でも得点した。
2004年にクラブがFLチャンピオンシップ(2部)に降格した。さらに財政難だったためニューカッスル・ユナイテッドFCに売却され、移動後もレギュラーとしてチームを牽引した。
ニューカッスル・ユナイテッド時代
2004年にニューカッスルへ完全移籍したジェイムズ・ミルナーは当初移籍には反対していた。10歳から所属する思い入れのあるクラブだったからだ。しかし財政難でどうしても利益を出さなければなかったリーズ・ユナイテッドは、泣く泣くミルナー売却に踏み切った。移籍後は初年度から好調の滑り出しだった。在籍時は通算94試合に出場、6ゴールをあげた。この頃から献身性やハードワークについては評価されていたミルナーだったが、突破力は少し物足りない印象だった。
アストンヴィラ時代
2008年8月29日、契約内容の問題でニューカッスルを退団したジェイムズ・ミルナーは、アストンヴィラへ移籍。2009年夏センターハーフのギャレス・バリーがマンチェスター・シティへ移籍したことにより、ミルナーが望んでいたセンターハーフでプレーすることになった。
2009-2010シーズンはリーグ戦に通算36試合に出場し、7ゴール12アシストを記録。その功績が讃えられ、プレミアリーグの最優秀若手としてベストイレブンに選ばれた。
マンチェスター・シティ時代
2010年8月18日にスティーヴン・アイルランド+1800万ポンドのトレードでマンチェスター・シティに移籍。同月23日のリヴァプール戦でデビューを果たした。その試合ではギャレス・バリーの得点をアシスト、幸先の良いスタートを切った。
2013-2014シーズンでは全大会で通算15アシストを記録、自身のキャリアベストタイのアシスト記録をマークした。
しかし好調だった2013-2014シーズン以降、多くの若手有力選手の活躍によりスタメン出場が減少。2014年9月にはシティ退団の可能性について言及した。当時の監督だったマヌエル・ペジェグリーニ監督に、自身の万能性は高く評価されていたものの、シーズン終了後に契約満了で退団する運びとなった。
リヴァプール時代
ジェイムズ・ミルナーがマンチェスター・シティFCからの再契約を断ったのには理由がある。それは彼が希望するポジションでの出場機会を得るためだ。その希望を実現させるため、2015年6月4日にリヴァプールFCへの移籍に踏み切ったのだった。この苦渋の決断に対してミルナーは「シティを去るのは難しい決断だったが、この移籍が僕にとっていいものになると信じている。多くの試合に出場し、リヴァプールが掲げる改革に貢献したい」と強い意気込みを語っていた。
その意気込み通りミルナーは幾度となく我々に熱いプレーを見せてくれた。チャンピオンズリーグ決勝をかけたグループステージ最終節、SSCナポリ戦ではモハメド・サラーの決勝ゴールをアシスト。決勝トーナメント・ラウンド16のバイエルン・ミュンヘン戦ではファン・ダイクの決勝ゴールをアシスト。2018-2019シーズンでは数多くのアシストでチームの勝利に貢献した。
CL決勝のトッテナム戦では先発出場とはいかなかったが、後半62分からピッチに立つと、デイフェンス面だけでなく、相手を脅かす豪快なシュートを放つなど、攻守ともにチームのCL優勝に貢献した。
次シーズンではリヴァプールとの契約延長を発表、その期間を2022年までとした。3月7日、AFCボーンマス戦ではライアン・フレイザーのループシュートをゴールラインギリギリで防いだ。なおこの偉大なプレーはクラブ公式サイトで驚異の340万回再生を超えている。
イングランド代表
2009年にイングランド代表に招集されて以来、2016年までの各年代でプレーしている。これまで通算61試合に出場し、1得点をあげている。そして2016年に行われたEUROフランス大会出場後の8月5日に、クラブに集中するため代表引退を発表した。
その引退発表後、実はミルナーは代表復帰を勧められたことが2回ある。1度目は当時監督を務めていたサム・アラダイスの代わりにギャレス・サウスゲート監督が就任したときだ。ミルナーはこの時もクラブを専念を理由に断っている。2度目は2018年FIFAワールドカップロシア大会のメンバー選考時だ。リヴァプールに専念するため代表引退を決めた男は、如何なる時もリヴァプールに忠実だった。
ジェイムズ・ミルナーのプレースタイル・特徴
長年リヴァプールの副将としてチームを牽引してきたジェームズ・ミルナー。これまでのキャリアの中で、GKとCB以外の全てのポジション経験した万能屋ミルナーのプレースタイルを4つのポイントから考察していく。
豊富な運動量で守備でも大活躍
ジェイムズ・ミルナーの持ち味として豊富な運動量が挙げられる。プレースタイルで言えばチェルシー所属のエンゴロ・カンテに似ている。持ち前のスタミナを活かし、ピッチを縦横無尽に駆け回る。攻守ともに手を抜けないMFに必須の能力だ。チャンス時にはしっかりと攻撃に参加し、ピンチの時はすぐさまプレッシングを行い、守備に加勢する。どちらかといえば攻撃より守備での活躍が多い。また1マッチでの走行距離も凄まじい。2018-2019プレミアリーグ第5節PSG戦でのミルナーは驚異の12kmを超えていた。さらに2位のヘンダーソンとは約1kmの差をつけている。さらにこの数値を安定的にたたき出しているから驚きだ。
ミルナーの運動量はほんと頼もしい
— のえりあむ (@noeliamcfc) March 22, 2014
抜群の安定感でチームに貢献
今季リヴァプールは予想以上に怪我人が多い。ただ安定感抜群のミルナーは例外だ。ミルナーは大きな怪我で戦線を離脱することが少ない。仮に負傷したとしてすぐにピッチに舞い戻り、いつも通りのプレーを見せてくれる。怪我が少なくチームに貢献し続けられる選手こそトッププレイヤーにふさわしい。またベテラン選手であるミルナーはプレーに大きな波がない。だからこそコンスタントに結果を残し、リヴァプールの勝利に大きく貢献し続けられているのだろう。
MF:負傷者続出→ミルナー
WG:シャチリ以外の質の高い控え→ミルナー
ST:ボビーみたいな事出来る奴いないかなー→ミルナー
LB:ロボ怪我、モレノ~→ミルナー
CB:マティプ不安だしもう1枚→ミルナー
GK:ベテランで安定感あって若手の力になってやれるような・・・→あ、ミルナーすべてはミルナー
— Miya@超主観的YNWA (@my_ynwa_red) July 23, 2018
誰もが認めるポリバレント性
これまで多くのクラブで実績を重ねてきたミルナーにはユーティリティ性という言葉がお似合いだ。元日本代表監督の西野朗の言葉を借りればポリバレント性が非常に高い選手だ。得意なポジションは中央と語る彼だが、時にはSBとしてチームを牽引してくれる。マンチェスター・シティ所属時はMFやCBだけでなくトップ下やCFでの起用された経験もある。その経験を活かしたユーティリティ性は世界トップクラスで、現代最高のユーティリティプレイヤーの呼び声が高い。GKとCB以外のどこへ配置しても素晴らしい結果を残すミルナーだが、もしかするとその勢いでGKもやってのけそうだ。
現役ならミルナーですね。
ポリバレントな選手だけど何処でも一流の活躍してくれる渋いところがいいっす!多分、GK以外のポジションどこやっても日本代表のスタメン取れる。過去含めるとカイト!
あの献身性とスタミナはヤバい。— みっち@2021ドット絵描き始め! (@micci_dotter) May 16, 2018
正確なキックで数々のゴールをアシスト
ジェイムズ・ミルナーの持ち味は無尽蔵のスタミナやポリバレント性だけではない。キックの精度も非常に正確だ。2015-2016シーズンのプレミアリーグでは11アシスト、アストンヴィラ時代の2009-2010シーズンでは12アシストとどれも好成績を収めている。またチャンピオンズリーグでのパス成功率は79.1%、プレミアリーグでは驚異の86.1%と非常にキックの精度を持ち合わせている。
ミルナーさんのキック精度高いっすなー
— ユウスケ (@Shadow_K_) November 14, 2011
ジェイムズ・ミルナーの今後について
ジェイムズ・ミルナーはそのユーティリティ性が評価され、世界屈指のMFへと成長した。今後も彼の更なる進化に期待が高まるが、そこに年齢という壁が立ち塞がる。これからミルナーはどのようなサッカー人生を歩むのか考察してみた。
リヴァプールについて
現在副将としてチームを引っ張っているジェイムズ・ミルナーは今後も変わらないガッツと熱さでチームを鼓舞してくれるだろう。ただ今季のリヴァプールは例年に比べ、怪我での出場辞退する選手が後を絶たない。なんでも屋であるミルナーが怪我で離脱した選手の代わりに、その空いたポジションに入るといったこともあった。抜群のユーティリティ性がある彼だからこそなし得る業だが、本来このような状況は良いとは言えない。相次ぐ守備陣の離脱により、20歳の新人オザン・カバクが慣れない大舞台で危険なプレーをし続けている。果たしてリヴァプールはこの状況を打開し、本来の力を発揮できるのだろうか。
イングランド代表について
ジェイムズ・ミルナーが代表に復帰することはおそらくないだろう。彼が持つスキル自体は代表に選出されてもおかしくないほどのクオリティだ。しかし先述の通りミルナーは2度代表への誘いを断っている。あれから3年経過しているが彼のリヴァプールへの熱い思いは変わっていないはずだ。リヴァプールからはジョーダン・ヘンダーソンが選出されている。彼もミルナーに引けを取らないガッツのある選手だ。他にも様々なクラブから若手有力選手が招集されている。今後のイングランド代表の命運は各クラブからの若い精鋭達に任された。
移籍などの情報
リヴァプールを愛しているミルナーが他クラブに移ることはないだろう。クラブに専念するための2度代表入りを断っている。2018-2019シーズンでは2024年までリヴァプールとの契約を延長した。
また、現役引退についても2018年に示唆している。幾つかのステージを用意しているとした語った上で、現役引退後は指導者としての可能性も考えているという。プロとしておよそ20年間プレーしてきたミルナー。年齢的にも幾つかのオプションを用意していると話す彼が今後どのような選択を取るのか注目だ。