テクニックと運動量で勝負する東京五輪世代渡辺皓太のプレースタイル

2019年にはコパアメリカ(南米選手権)に出場する若手主体の日本代表メンバーに、J2からただ1名選ばれたのが当時東京ヴェルディ所属の渡辺皓太選手でした。

その直後に移籍した横浜F・マリノスでは、J1リーグ優勝を経験。現在は東京五輪の出場を目指してU-24日本代表での生き残りを目指しています。

小柄で童顔な見かけとは裏腹に、豊富な運動量で所狭しとピッチを駆け回るうえに、子供のころから培ってきた繊細なテクニックで味方のチャンスを演出する選手です。

テクニックに優れた渡辺皓太選手の基礎は、育成力に定評のある東京ヴェルディの下部組織で磨かれてきたものです。幼少期からヴェルディ一筋で育ち、期待されたままにトップ昇格。弱冠20歳にしてキャプテンにも任命され、さらに異例ともいえるJ2チームから日本代表に選ばれた逸材です。

東京五輪出場を目指す競争の中で、3月には金メダル候補と目されるアルゼンチン代表とも渡り合い、本戦のメンバー入りを目指す戦いを続けています。

渡辺皓太のプロフィール

生年月日 1998年10月18日
国籍 日本
出身 神奈川県川崎市
身長 165㎝
体重 61㎏
利き足
ポジション MF
背番号 横浜F・マリノス:26
タイトル 明治安田生命J1リーグ優勝(2019年)
第18回アジア競技大会準優勝(2018年)

渡辺皓太の経歴

プロ入り前 ヴェルディ下部組織育ち14年!

4歳ですでに東京ヴェルディの下部組織に所属していた渡辺皓太選手。小学校4年時に、全国少年サッカー大会のメンバーに入り2学年上の先輩たちとともに全国大会でプレー。当時から小柄だったため年上の中に入ると一層その小ささが際立ったそうですが、ゴールを量産していました。

その後、18歳でプロ契約を結ぶまで、ジュニア、ジュニアユース、ユースと、育成力に定評のある東京ヴェルディで常に注目される存在でした。

俊敏性に優れるうえ、思い切りよく身体を当ててボールを奪う能力に長けており、さらに一手先を読んだポジショニングも高く評価されてきていました。

なお1学年上のMF・井上潮音(現神戸)、1学年下のMF・藤本寛也(現ヴィセンテ=ポルトガル)などもテクニシャンとして有名です。

東京ヴェルディでテクニックを見せつけ主将に就任

高校生の段階で、すでにJ2のリーグ戦に出場していた渡辺選手は既定路線通りに、トップ昇格。同年にプロ契約をしたのは渡辺選手だけでした。

18歳で迎えたルーキーイヤーにいきなりリーグ戦27試合に出場し、翌年の2年目には36試合にまで出場数を伸ばし完全に主力選手としての地位を築きます。

ドリブルでボールを運べることに加えて、多彩なキックを身に着け、ゲームを組み立てられる存在に成長していきます。小柄なのに当たり負けない気持ちのこもったプレーと豊富な運動量で、「豆タンク」と呼ばれていた渡辺選手をプロ3年目で主将に任命したのは新たに就任した永井秀樹監督でした。

しかし主将就任とほぼ同時に横浜F・マリノスからの獲得オファーが届き、渡辺選手は移籍の道を選択します。永井監督とも何度も話し合い慰留を受けましたが、プロ3年目ながら、海外では10代の選手がトップレベルで活躍していることへの焦り、対抗意識があったようです。

お世話になりながら、トップチームは低迷を続ける名門の東京Vを再建したいという思いがなかったはずがありません。当時、東京Vのホームページでは、シーズン途中での移籍を詫びつつも、将来の自身のために決断をしたというコメントが掲載されました。

急転直下の横浜F・マリノスへの移籍

移籍した横浜F・マリノスはJ1リーグの優勝を目指して、積極的な補強を進めていました。その夏に、天野純、三好康児というレギュラークラスの攻撃的MFが相次いでベルギーに移籍したこともあり、同じポジションを任せられ、伸びしろも十分な渡辺選手に白羽の矢が立ったのです。

常にベンチ入りメンバーには入るものの先発で出場する機会は少なく、チームは終盤に7連勝をあげて、見事に逆転優勝を果たすものの渡辺選手自身には貢献したという手ごたえは少なかったと言います。客観的には、チームがほぼ出来上がった状態で夏に加わったのですから、まずまずの成績だったと評価できますが自己評価はずっと厳しいようです。

翌2020年シーズンは、出場試合数を19試合に伸ばしましたが、これもコロナの影響による「過密日程のために、選手を変えざるをえなかったから」と、貪欲にレギュラー定着を狙っています。

2021年シーズンが渡辺選手にとっての勝負の1年になるのはまちがいないでしょう。

日本代表/東京五輪代表入りを目指して

2019年夏、初めて日本代表に選出され、南米の強豪と戦うコパアメリカに向かいました。東京Vとしては大黒将志以来、11年ぶりの日本代表選手となりましたが

、直前の試合で怪我をしていたことも影響してか、出場機会はまったく無しで悔しい思いをしました。

2021年は、1年延期となった東京五輪のメンバー入りを目指します。3月には親善試合でアルゼンチン代表との2試合に出場します。かなり高レベルな相手に、歯が立たなかったと振り返りましたが、とくに守備の部分で、彼の判断力が勝る部分も見受けられました。

本大会の出場をにらんで必死のアピールを続けていきたいところです。

渡辺皓太のプレースタイル・特徴

「攻守の切り替えの速さ」に注目

試合中に渡辺選手の動きを追っていると、細かく動き回っていることにすぐ気が付くはずです。いわゆる「ボックス・トゥ・ボックス」型の選手で、味方陣内の守備でも貢献しながら、攻撃にも積極的に関与します。

現在、横浜FMでは中盤の選手に豊富な運動量、とくにボールを奪われたあとに即座に奪い返す守備を徹底させますが、ここが渡辺選手の良さとピッタリ合致しています。相手からすれば、ボールを奪い返した直後にもかかわらず、すばやく渡辺選手のような一瞬のプレースピードがあり、球際にも強い選手が迫ってくるのは大きなプレッシャーとなります。

その結果、彼がボールを再び奪い返す場面に加えて、相手のパスミスを誘発し、味方が攻撃のペースを握り続けることにもつながります。

この「切り替えの速さ」は、教えられてもなかなか身体に染み込むものではなく、天性の才能と言っていいでしょう。

的確なポジショニング、スペースの隙を突く!

渡辺選手の特長として盛んに言われるのは、ポジショニングの的確さです。育成年代から、歴代の指導者が口をそろえるのが、彼はプレーを予測する能力に長けていること。次にボールがどこへ行くのか、それに伴って相手選手はどう動くのかを瞬時に計算できるため、「気の利いた」と言われる、味方がいてほしいところにいるポジショニングができるのです。

この能力がさらに生かされるのは、味方がボールを奪った瞬間です。相手の守備が整う前に、急所となるところ、具体的には相手選手がカバーできないスペースを相手よりも早く見つけて、そこでボールをもらおうとします。

この飛び出し、勝負度胸もすばらしく、渡辺選手が相手陣内深くまで侵入するときは高確率で味方に決定機が生まれています。

小柄なのに強い 「下から突き上げる守備」とは

165㎝という小柄な体格は一般的に不利だというのが定説です。中盤のポジションにも大型の選手が増えている中、身体をぶつけ合う場面も多いためです。しかし、渡辺選手は東京V時代に受けたインタビューで「身体が小さいことで不利だと感じたことは一度もない。むしろ競り合ったときに下から突き上げるなど、有利」と答えています。

その背景には、重心が低く安定しているということ、また身体の筋肉が柔らかく、ゴムまりのように弾む特性があるためだと言われています。

そのうえ、一瞬のスピードという敏捷性があるため、相手に身体を当てた後に交わす動きもうまく、ボールをキープする能力も高いのが特長です。

自分の身体を上手に使った守備も、誰かに習ってというより自然に小さいころからの工夫で、身に着けたもの。渡辺選手の非凡さが表れています。

渡辺皓太の今後について

横浜F・マリノスについて

まず目指すはレギュラーポジションの奪取です。渡辺選手の適性ポジションは、攻撃的なMFまたはボランチ。横浜FMでは、通常ここに3名の選手を起用しますが、攻撃的な2列目ならマルコス・ジュニオール、天野純が、3列目ならば喜田拓也、扇原貴宏という強力なライバルたちがいます。

2021年開幕時からはスタメンで3試合に出場しました。途中出場もあわせるとほぼ全試合で出場を続けています。

東京Vから強い決意をもって移籍して3シーズン目となり、着実にプレー時間を伸ばしており、出場すれば、守備、攻撃両面で質の高いプレーができているだけに、ゴール、アシストという確かな結果がほしいというのは本人も自覚しているところです。

いい選手、すばらしい選手であることはチーム内からもサポーターからも認められています。もう一段階上の選手へと成長が期待されています。

五輪出場なるか

前述の通り、渡辺選手の個人的な目標の一つに、東京五輪のメンバー入りがあります。本大会の登録メンバーは、オーバーエイジ(OA)枠の3選手も含めて18名という超、狭き門。ボランチでは田中碧(川崎F)、中山雄太(ズウォレ=オランダ)の選出は確実視されています。