日本最高のダイナモ井手口陽介の魅力経歴・プレースタイルに迫る

2020年のJリーグで圧倒的な強さを見せつけた川崎フロンターレに次ぐ成績を残したガンバ大阪。宮本監督就任3年目ということもあり、監督の戦術も浸透しチームも成熟してきた。シーズン途中には12戦負けなしの勝負強さを見せつけ、結果的にリーグ2位、3年ぶりのACL出場権を獲得した。さらに、天皇杯でも準優勝(リーグ、天皇は共に優勝は川崎フロンターレ)。ここ数シーズン低迷していたガンバ大阪の完全復活に期待が集まっている。

復調の兆しを見せているガンバ大阪において、替えの効かない選手になっているのが現在24歳の日本代表MF井手口陽介だ。ガンバ大阪が強かった時代には必ず監督の哲学をピッチ上で体現するMFの存在があった。Jリーグ初優勝を果たした西野監督時代には、観客を魅了する攻撃的サッカーの体現者として二川孝広選手が、日本人監督として史上初の国内3冠を達成した長谷川監督時代には遠藤保仁選手が不動のボランチとして君臨していた。

そして今、宮本監督の、奪ってから速く攻めるという哲学をピッチ上で体現しているのが井手口だ。かつての二川選手や遠藤選手のように、チームの主役として、ガンバ大阪をタイトルに導けるか。その活躍に期待が集まる。

今回の記事では、ガンバ大阪で躍進する井手口のこれまでのキャリア、プレースタイル、特徴、さらには今後の展望についても考察を交えて紹介していく。

本記事を通して井手口についての理解を深め、今後の活躍にも注目して見てほしい。

井手口陽介のプロフィール

 

生年月日 1996年8月23日
国籍 日本
出身 福岡県福岡市
身長 171㎝
体重 71㎏
利き足
ポジション MF(CMF)
背番号 15
タイトル メニコンカップ(クラブユース東西対抗戦) 最優秀選手(2011年)
YBCルヴァンカップニューヒーロー賞(2016年)
Jリーグ優秀選手賞(2016年、2017年、2020年)
Jリーグベストヤングプレーヤー賞(2016年)
Jリーグベストイレブン:1回(2017年)
Jリーグ月間MVP(2020年10月)
SNSアカウント https://www.instagram.com/1227hny/

井手口選手は2015年19歳の時に一般女性と入籍。相手は中学からの同級生。

井手口陽介の経歴

本章では、若くしてプロデビューを果たし、海外挑戦を経て、現在ガンバ大阪で替えの効かない選手にまで成長した井手口選手のこれまでのキャリアを振り返る。

ガンバ大阪ジュニアユースに一発合格

井手口選手は福岡県福岡市で生まれ育った。8歳上と5歳上の兄の影響もあり幼少期からサッカーに触れてきた。小学1年生の時に開催された2002年日韓ワールドカップでは、ブラジル代表のロナウドに魅了され、何度もプレーを見返していたという。

井手口は小学4年生の時にアビスパ福岡のスクールに通いながら、地元の中央FC(翌年からストリートSCに改名)に入団。小学6年生で油山カメリアFCに移籍した。当時はフォワードのポジションでプレーしていた。

アビスパ福岡の下部組織に所属していた次兄の全国大会の試合を見た母親は、プレーの質の高さに驚き、井手口が中学生になるタイミングでより高いレベルの環境でサッカーをやらせてあげたいと考え、ガンバ大阪のジュニアユースセレクション受験を提案。セレクションを受けた井手口は、ガンバ大阪アカデミーのスタッフの満場一致で最終選考を待たずして合格を告げられた。その類い稀な才能にはガンバ大阪アカデミーのスタッフも太鼓判を押していた。

そして、中学進学と同時に大阪にわたり、ガンバ大阪ジュニアユースに加入。加入後も才能の高さを見せつけ、各カテゴリーを飛び級でプレーしていた。2011年のメニコンカップクラブユース東西対抗戦では最優秀選手賞を受賞。同年には飛び級でユースチームの練習にも参加し、Jユースカップにも出場した。ユース昇格後は年代別の日本代表にも召集されている。

そして、追手門学院高等学校2年生時の2013年には、2種登録選手としてトップチームに登録された。

ガンバ大阪トップチームでも主力に定着

高校3年生の2014年には、トップチームのキャンプに参加し、3月のナビスコカップグループリーグ第1節で公式戦初のベンチ入り。同月には飛び級でのトップチーム昇格が発表された。ガンバ大阪でユースチームから飛び級でのトップチーム昇格は、宇佐美貴史以来5人目の快挙だ。2014年のJリーグでは出場機会はなかったが、カップ戦で公式戦デビューを果たした。

2015シーズンには出場機会を徐々に増やし、クラブで公式戦15試合に出場。Jリーグデビューは4月の松本山雅FC戦。主に試合終盤での守備要因として投入されることが多かった。天皇杯決勝の浦和戦にもボランチのポジションで途中出場し、ガンバ大阪の天皇杯連覇に貢献した。

2016シーズンにはレギュラーに定着。前半戦はU23日本代表との兼ね合いで出場機会が限られたが、後半戦からは主力としてプレー。公式戦28試合に出場し、4ゴール2アシストを記録した。また、同年のルヴァンカップではニューヒーロー賞を獲得、Jリーグではベストヤングプレーヤー賞を受賞した。W受賞は、2002年の坪井慶介以来史上3人目だ。

2017シーズンには、それまで着用していた背番号21から8に変更。自身はクラブの公式戦37試合出場5ゴール8アシストを記録。完全にチームの主力としての地位を築き上げた。同シーズンには、A代表でもブレイクを果たし、一躍スターダムを駆け上がった。

そして、代表での国際試合経験も増え、世界のレベルを体感した井手口は自身のさらなる成長を求めて、2017シーズン終了後に海外挑戦を決断。

挫折を味わったクルトゥラル・レオネサ時代

2018年1月9日、イングランドの古豪リーズユナイテッド(当時イングランド2部)への移籍が発表された。当時の移籍金は50万ポンド(約7600万円)、2022年夏までの4年半の長期契約だった。

イギリスの労働ビザの問題もあり、リーズ加入と同時に、スペイン2部のクルトゥラル・レオネサへの2017-18シーズン終了時までのレンタル移籍も発表された。加入直後の1月23日には途中出場でスペイン2部デビューを果たす。その後の2月18日のラージョ・バジェカーノ戦では初のスタメン出場を果たす。加入当初はチームからの期待値も高く、デビュー戦から5試合連続で出場機会を与えられていた。

しかし、その後は評価が急降下。文化の違いや言語の壁もあり、監督やチームメイトとの打ち解けることができず、出場機会も得られなかった。チームも低迷を続け、最終的に22チーム中19位でシーズンを終え、3部リーグへの降格が決まった。

怪我に泣いたグロイター・フュルト時代

2018-19シーズンの開幕に向けてリーズユナイテッドに戻った井手口だが、新指揮官ビエルサの下では構想外になり、シーズン開幕の前にブンデスリーガ2部のグロイター・フュルトへ買取オプション付きシーズンレンタルで移籍。

出場機会を求めて移籍したグロイター・フェルトでは好調なスタートを切る。リーグ戦第5節のホルシュタイン・キール戦では初のスタメン出場を果たし、移籍後初ゴールも決めた。続く第6節でもフル出場を果たした。

定位置確保に向けて、着実に出場機会を得ていた井手口だが、第7節のディナモ・ドレスデン戦で右ひざ後十字じん帯断裂の大ケガを負ってしまった。さらに、1月9日にも右ひざの半月板を損傷してしまい、シーズンの大半の試合を欠場。

怪我から復帰した井手口は、ガンバ大阪への復帰を決意した。

ガンバ大阪復帰。輝きを取り戻す

2019年8月5日、完全移籍で約1年半ぶりにガンバ大阪への復帰が決まった。復帰後の背番号は、今野が長年着用していた15番を引き継ぎ、長年ガンバ大阪を牽引してきた大先輩のような活躍を胸に誓った。復帰直後の8月10日のサンフレッチェ戦に途中交代で復帰後初出場を果たす。スペインとドイツでの約1年半の経験を経て、成長した姿をガンバファンに見せつけた。シーズン後半からの加入で、公式戦16試合に出場し、2ゴールを記録した。

2020シーズン

続く2020シーズンには、完全復調を果たし、宮本体制3年目のガンバ大阪で、指揮官の信頼を勝ち取った。チームに欠かせない選手としてボランチの位置に君臨。シーズン終盤に怪我での離脱もあったが、公式戦28試合に出場4ゴール3アシストの活躍を残し、Jリーグ2位、天皇杯2位の成績に貢献した。

悲願のタイトル獲得に向けて、2021シーズンも井手口の活躍に注目が集まる。

日本代表

ここまでは、井手口選手のクラブでのキャリアに注目して紹介してきたが、最後に代表キャリアについても触れていきたい。

幼少期から才能の高さを見せつけ、ガンバ大阪ジュニアユースでも常に飛び級で順調なキャリアを歩んできた井手口。ガンバ大阪ユースに昇格した15歳の時から各年代別の代表にも選出されるなど、早い時期から代表でのキャリアを歩み始めている。

2016年のAFCU-23選手権ではU-23代表に最年少で選出され、グループリーグ第3戦のサウジアラビア戦ではゴールも決めている。さらに、同年のリオデジャネイロオリンピックでも最年少で選出され、グループリーグの2試合に出場した。11月には国際親善試合とW杯アジア3次予選の日本代表メンバーに初選出された。

そして、2017年20歳でキリンチャレンジカップのシリア戦で途中出場し、A代表デビューを飾った。続くW杯アジア3次予選のイラク戦では初のスタメン出場を果たす。8月のオーストラリア戦では試合終盤に試合を決定付ける豪快なミドルシュートを決め、日本代表の6大会連続W杯出場に貢献した。

W杯予選での活躍もあり、本選への選出は濃厚と見られていたが、海外移籍先で出場機会が得られていないこともあり落選。その後も長らく日本代表からは遠のいた。

ガンバ大阪復帰を機に復調を果たした井手口は、森保監督新体制の日本代表にも召集され、代表復帰を飾っている。現在はレギュラーの座を他の選手に譲っているが、今後の活躍次第では、定位置を確保する可能性もある。

井手口陽介のプレースタイル・特徴

若くしてガンバ大阪トップチームと日本代表デビューを飾り、海外での挫折を経て成長して帰ってきた井手口選手。ガンバ大阪復帰後はチームの中心的な役割を果たしている。

今回は、完全復活を果たした井手口選手のプレースタイルと特徴について、3つの視点から紹介していく。井手口選手の特徴を理解した上で、試合での彼の活躍に注目して見てほしい。

運動量とボール奪取能力に優れたダイナモ

井手口の強みは90分間攻守に走る続ける運動量とボール奪取能力だ。171cm、71kgと決して恵まれた体格ではないが、当たり負けしないフィジカルを持っている。中盤ボランチの位置を主戦場としており、豊富な運動量とフィジカル、ボール奪取で中盤の守備に厚みを持たせる選手だ。

相手の攻撃の芽を摘む寄せの速さとプレッシングは強力で球際の強さを発揮する。積極的な守備を得意としている。また、タックル成功率やインターセプト数も非常に高く、Jリーグでもトップクラスの成績を残している。

強度の高いプレーを90分間やり続ける体力も兼ね備えており、試合平均の走行距離はチームトップだ。

縦への推進力も兼ね備えたオールラウンダー

井手口の最大の強みはその守備的な能力だが、攻撃面での貢献度も非常に高い。自らボールを奪ってからドリブルや味方へのパスで、一気に縦に攻める。攻守切り替えのスイッチ役もこなせる。

その推進力を支えているのが、彼のキックの精度の高さだ。特に利き足の精度は非常に高く、パスやクロス、セットプレーからのチャンスメイクができる選手だ。

また、試合展開を読む知力も兼ね備えており、状況に応じたパスを瞬時に判断できる。奪ってから速く攻めるスタイルのガンバ大阪にとって、井手口以上に最適な人材はいないだろう。

自ら得点も決める積極性

井手口は攻守において高い能力を発揮するオールラウンダーだが、さらにゴールへの積極性も兼ね備えている点が魅力的だ。

中盤の底から相手ゴール前にまで飛び出しゴールを狙う。高いキック精度を活かしたエリア外からのミドルシュートも強烈だ。ロシアW杯予選最終戦オーストラリアとの試合で決めたミドルシュートを覚えている方も多いのではないだろうか。

基本的にはボランチでの起用が多いが、時にインサイドハーフなどより攻撃的なポジションもこなせる。中盤の選手として必要な能力をすべて兼ね備えた選手だ。その能力の高さから日本最高のダイナモとも評されている。

井手口陽介の今後について

最後に、井手口選手の今後の展望について、クラブ、代表、移籍情報それぞれについて考察していく。

G大阪について

2021シーズンは宮本監督体制4年目となり、戦術も十分に浸透しているはずだ。さらにオフシーズンには手堅い補強を行い、チーム力もさらに強化されている。昨シーズンは川崎フロンターレにタイトルを目の前でさらわれ続けただけに、今年の目標は悲願のタイトル獲得になるだろう。

宮本監督からの信頼も厚く、ボランチのファーストチョイスになっている。怪我さえなければシーズンの大半の試合には出場するだろう。攻守の起点になっているだけに、井手口のパフォーマンスがチームの成績にも大きく関与するはずだ。悲願のタイトル獲得に向けて、今後の活躍に期待したい。

日本代表について

海外移籍により出場時間が得られていなかった期間は日本代表から遠のいていたが、ガンバ大阪復帰後、森保監督から招集を受け、日本代表にも復帰した。

現在、日本代表の中盤の競争をリードしているのは、柴崎と遠藤航の2人だろう。特に遠藤とのポジション争いが必須になるだろう。さらには、橋本拳人や山口蛍などの実力者もいる。コロナパンデミックもあり、いまだ日本代表のベストメンバーが見えてこないが、ボランチの候補の一人に入っていることは間違いないだろう。

移籍などの情報

井手口については、移籍の噂はほとんど報道されていない。2019シーズンの途中にガンバ大阪に復帰して今年で3年目だ。また、中学生の時からガンバ大阪のユースで育ち、現在はチームの中心選手として活躍しているだけに、他のクラブに移籍することは考えにくい。

メディアからの質問で、尊敬する先輩について聞かれた井手口は、長年ガンバ大阪で活躍を続けた遠藤保仁や今野の名前を挙げている。おそらく、この偉大な先輩たちのように今後のガンバ大阪を牽引していくことを望んでいるだろう。