畠中槙之輔は次世代型のセンターバック。突出したパス能力を武器に戦う

2019年、当時J1リーグ戦の出場記録わずか9試合にもかかわらずいきなり日本代表に抜擢されシンデレラボーイとなった畠中槙之輔選手。センターバックという経験値が重要視されるポジションなのに一体何を期待されたのでしょうか。畠中選手の類まれな長所を理解すると、これからのセンターバックに要求される能力が何かが浮かび上がってきます。

畠中槙之輔選手のプロフィール

生年月日 1995年8月25日
出身 神奈川県横浜市
身長 184㎝
体重 80㎏
利き足 右(左右同じ精度で蹴れる)
ポジション DF(CB)
背番号 横浜F・マリノス:4
日本代表:4
タイトル ■クラブ
横浜FM J1リーグ(2019)
■個人
Jリーグ 優秀選手賞):1回(2019)
SNSアカウント Twitter:https://twitter.com/shin__444
instagram:https://www.instagram.com/hatanaka_shinnosuke

畠中槙之輔選手の経歴

幼少期から今に至るまで、どのようなサッカー人生を送ってきたのか。

幼少期・生い立ち、プロ入り前

横浜生まれで、小学1年から地元にある強豪クラブ横浜すみれSCでサッカーを始める。当時から身体が大きいうえにリフティングが得意だったそうです。4年生で東京ヴェルディのジュニアチームに合格すると、ジュニアユース、ユースとヴェルディの下部組織一筋で育ちます。東京ヴェルディといえば、今も昔もテクニックに優れた選手を多数輩出しており、現在の畠中選手の正確なキックや巧みな足元の技術もこのころから養われたものなのでしょう。ちなみに2学年上に中島翔哉、1学年上に安在和樹、高木大輔。同級生に安西幸輝。1歳下に三竿健斗…と日本代表に名を連ねるような選手がズラリ。いかに高いレベルで揉まれてきたかが分かります。畠中選手が高校1年時にはクラブユースサッカー選手権で優勝、2年時にはユース年代の最高峰であるプレミアリーグEASTの王者にもなっています。

順当にトップ昇格。しかし2年間は東京VでもU-22選抜でも試合にほぼ出られず

18歳でトップ昇格を果たしますが、2014年・2015年とリーグ戦は2年間で6試合の出場にとどまりました。また当時は若手選手に出場機会を創出しようと、J3リーグに22歳以下の有望選手の選抜チームを作る制度がありましたが、この「JリーグU-22選抜」でも2年間で4試合の出場にとどまりました。身体づくりも含めて、まだプロで戦うだけの十分な土壌が出来上がっていなかったと言えるでしょう。

町田ゼルビアで一気にブレイクチャンスを掴む

プロ3年目の16年1月に、FC町田ゼルビアにレンタル移籍。レギュラー獲得を目標に掲げると、一気に飛躍してリーグ戦29試合に出場します。フィジカルも鍛えられ、経験を積んだ畠中選手は結局1年で町田を去り、東京Vに呼び戻される形になりました。「町田ゼルビアのおかげでプロサッカー選手としてようやくスタートラインに立てた」という感謝の言葉を残しています。そして翌17年からは東京ヴェルディでもレギュラーのCBとして、大きく出場試合数を伸ばしていったのです。このころには対人守備に強く、持ち前のパスセンスも随所に披露していました。世間的にもJ2で指折りのセンターバックの一人として認識されるまで急成長を果たしていたのです。

横浜F・マリノスへ完全移籍。レジェンドとの出会い

畠中選手は東京Vの主力として順調に成長を続けていました。しかしチームはJ2の中位にいて、なかなかJ1昇格には手が届きません。よりレベルの高い環境でプレーする同級生も少なくない中で、J2で戦い続ける自分自身に対して少しずつ焦りが生まれていました。そのころJ1の複数チームからのオファーが届きました。なかでも熱心だったのはG大阪と出身地である横浜FMだったと伝えられています。どちらのクラブも大型の日本人センターバック、しかも若手という喉から手が出るほど欲しい存在でした。最終的には、目指している攻撃的なサッカーが自分自身に合っているからという理由で、畠中選手は横浜FMへの完全移籍を決断します。

横浜FMといえば、中澤佑二や栗原勇蔵という日本代表経験も豊富なリーグ最高のCBが立ちはだかっていましたが、世代交代の時期。そこに後方から正確なパスで攻撃参加できる畠中選手に白羽の矢が立ったのです。

とくに同じく東京V育ちで、歴代最高のCBと呼び声の高い中澤佑二選手のことを、「いるだけでオーラが違う」と畠中選手は評しました。J1通算593試合出場(史上3位)を誇り、日本代表としてW杯にも2大会出場したレジェンドです。このクラスの選手が一切手を抜かない練習をし、身体のケアを含めものすごい努力をしていることに若手選手は圧倒されると言いますが、畠中選手も大いに刺激を受けます。

結局、中澤選手はこのシーズン限りで現役を引退しますので、チームメイトだった期間は半年足らずでした。しかしレジェンドにとって現役最後の試合だったJ1リーグ最終戦で出場した際、代わりにピッチを退いたのが畠中選手だったというのはなんとも数奇な話です。

横浜F・マリノスでリーグ全試合出場。チャンピオンへ

畠中選手が加入した当時は、ほぼ同時期にドゥシャン(セルビア人、現・徳島)とチアゴ・マルチンス(ブラジル人)という強力な外国人CB2名も加わったタイミングで、彼ら二人がレギュラーとなっていました。そのため移籍した2018年の横浜FMでのリーグ戦出場は5試合にとどまっています。

この序列をひっくり返して畠中選手がレギュラーを奪ったのは2019年の開幕戦1週間前の紅白戦でした。珠玉のパフォーマンスを見せて、逆転で開幕スタメンに名を連ねると結局なんと自身初のリーグ戦全試合出場を達成したのでした。ズバズバ通す縦へのパスにサポーターは酔いしれ、チームの15年ぶりのJ1制覇にも、大きく貢献。同僚のチアゴ・マルチンスと組んだセンターバックは速さと強さを兼ね備え、リーグ最強センターバックコンビの名をほしいままにしていました。

実は、アンジェ・ポステコグルー監督はこの畠中選手の成長、躍進を予言していた一人です。2018年のシーズン最終節(ラストマッチとなる中澤選手に交代したあの試合)を前に、「シンがいい選手であることはすでに証明された。来年(2019年)は重要な戦力になってくれるだろう」。その言葉の通りの成長は周囲の期待を上回っていたかもしれません。「できれば2019年中には日本代表にも選ばれたい」という畠中選手の願いは早々にかなえられることとなります。

念願の日本代表デビュー。ライバルは冨安、吉田、植田ら超強力。

畠中選手が横浜FMでレギュラーになったのは19年2月ですが、3月には森保監督によって日本代表初選出されています。これがきっかけで世の中にも一気に名前が知られるようになりました。当時J1の出場試合数が8だったことを考えると異例の大抜擢です。それも、畠中選手が非凡なパス能力を見せていたからだと考えられます。

現在、日本代表のセンターバックと言えば、吉田麻也、冨安健洋、植田直通という海外組が上位にいます。そこに現在はG大阪で、すっかり怪我も癒えた昌子源がいて、次いで畠中選手と三浦弦太といったところでしょう。ライバルは強力ですが、攻撃時の魅力はやはり畠中選手の重要な特長です。
W杯カタール大会のメンバー入りも狙えるところにつけています。代表に選ばれるのが当たり前になってくると、次はレギュラーを狙いたいところ。畠中選手のさらなる成長が楽しみです。

畠中槙之輔のプレースタイル・特徴

畠中選手の特徴について、言及していく。

ビルドアップの起点になる圧倒的なパス能力の高さ

畠中選手がセンターバックとして異質と言っていいのは、そのパス能力の高さです。歴代の日本代表クラスの選手をたどっても、畠中ほどのパス能力をもった選手はいないと言ってもいいかもしれません。ピッチを俯瞰してみる力、早く正確に狙った場所にボールを送る力の二つが必要です。彼のパスを見ていると、「突き刺す」という言葉がピッタリです。一般的にはセンターバックは縦パスを避ける傾向にあります。パスが狙いからずれて相手に奪われたら、即失点の危機に陥るためです。センターバックの後ろにはGK(ゴールキーパー)しかいませんので、ミスパスが許されないポジション。裏を返せば安全な選択が求められるなかで、畠中選手は果敢に相手の急所を突くパスを狙います。そのうえでパスの成功率はリーグ最高レベル。これが彼の最大の長所なのです。

 

高い足元の技術

ヴェルディ育ちの畠中選手はボールを扱う技術、俗にいう足元が巧みな選手です。昔ながらのセンターバックは、来たボールをヘディングで弾き返す、相手FWの突破を身体で防ぐというのが一般的でしたが、今はパス能力やドリブルで運べる力も求められます。

畠中選手の非凡さを見せつけたのは、2020年8月26日、明治安田生命J1リーグ第29節の札幌戦のゴールシーンです。味方のコーナーキックのこぼれ球を攻め残っていた畠中選手は相手DFにうまいタイミングで体をぶつけてマークを外すと、トラップもピタリ。そして寄せようとしてきたDFを右足で打つと見せかけてタイミングをずらすと、逆足の左で正確にズドン。

これを平然とやるところが畠中選手の技術の高さですね。

ハイラインというリスクを負っても、高い対人能力でカバー

ここまで攻撃面での特長にふれてきましたが、もちろん守備でも体が強いうえに、身体の使い方や駆け引きに長けているので、激しい当たりでボールを奪うだけでなく、たとえばラインコントロールの巧みさや、読みの鋭さでインターセプトできることもチームメイトからの信頼を掴んでいます。
また横浜FMの戦術的特徴として、攻撃時にサイドバックがポジションを離れるため、広大なスペースを二人のCBとGKだけでカバーしなくてはならないという宿命があります。そのためスピード自慢の相手FWとの直線勝負にも勝たなければなりませんし、自分の背後を狙ってくるロングボールにも正確に対処しなければなりません。失点と隣り合わせの、緊張感の高いミッションです。こうしたリスキーな戦術が取れるのも、畠中選手をはじめ、チアゴ・マルチンスほか、センターバック陣の高い能力があってこそなのです。
スピード、パワー、駆け引き・・・高いレベルでの攻防でピンチをしのいだ時、スタンドからは彼ら守備の選手たちにも惜しみない拍手が注がれます。

気持ちの強さも一流の証

出場するすべての試合で攻撃的な姿勢を崩していないメンタルの強さも彼の大きな武器と言えるでしょう。パスミスをして相手に渡してしまうこともあります。それがきっかけで失点してしまえば次は失敗を恐れて守りに入りたくもなるでしょう。それでも果敢に挑戦して、最大の武器である前方へのパスを通そうとトライします。

今、世界的にも攻撃に貢献できるセンターバックが必要とされています。マンチェスターシティのラボルト、リバプールのファンダイク、Rマドリードのヴァランなど超一流と評価されるCBは、いずれも高い「蹴る技術」を備えています。畠中選手が期待されている理由はまさにここにあります。そのうえで、もっと「絶対に抜けないなという雰囲気をもったDFになりたい」という高い目標ももっています。

畠中槙之輔の今後について

今後の畠中選手に期待しよう。

横浜F・マリノスについて

2021年の契約更新は、新体制発表会の前日までずれ込み、多くのファンを心配させました。

既存の選手の中で契約を更改したのはラストで、海外の複数のクラブからオファーが届いていたとされています。ギリギリまで迷ったのかもしれませんし、日本国内で屈指のCBとしては当然かもしれません。まずはリーグ王者奪回に向けて、怪我なく1年を過ごしてほしいところです。

日本代表について

2019年の春に代表初選出を果たすと、そこからコンスタントに招集されるようになっています。しかしW杯のアジア予選のような重要な公式戦ではまだ出番を得られていません。今後、日本代表の主力になれるかどうか、畠中選手にとっては2021年が重要な1年になるでしょう。強力なライバル選手に追いつき追い越すには、まずは普段のJリーグで高いパフォーマンスを持続することに尽きます。そうすれば代表合宿の練習や親善試合でもアピールの機会を作れるはず。飛躍のチャンスです。

移籍などの情報

もとから上昇志向の高い選手で、海外移籍にも前向きだということは知られています。上述したようにライバルの日本代表選手は軒並み欧州で活躍しています。今年26歳になる年齢のことを考えると、オファー次第ではこの夏に移籍するということもあるかもしれません。もちろん、まずは横浜FMの勝利を目指しますが、畠中選手自身のパフォーマンスがよいものであればあるほど、自身の好オファーを勝ち取ることにもつながるでしょう。